褒め合う文化で強固なチームを構築

シンクスマイル代表取締役 新子 明希

東京・渋谷の宮益坂。そこから少し奥に入った所に、シンクスマイルのオフィスがある。

オシャレな内装の入り口を抜け、通されたのはなんと和室。

掘り炬燵に足を延ばしながら待つと、元気なあいさつと共に代表の新子明希が入ってきた。

まだ40歳に届いたばかりの若さだが、経営歴は22年と大ベテラン。まさに破顔一笑、笑顔が印象的だ。

したことない。をへらす

CIMOS

シンクスマイルの事業はトラコレ(トライフィール・コレクション)、 Ziriri(ジリリ)、CIMOS(シーモス)の3本柱から成る。

トラコレは日本最大級のお試しサイトだ。現在、提携店舗数は1万件以上。
口コミ数も34万件を超え、その9割近くを女性が占めている。
会員は必ずアンケートに答えるという条件で、サービスなどを破格の値段で体験できる。

店舗のメリットも大きい。まず、お客が来店するきっかけを作れる。
もちろん、喜んでもらえればリピーター候補となり、仮に気に入られなかったとしてもアンケートによってその原因と改善策を拾えるため、 いずれにせよ損は無い。元々お客の入っていなかった時間で集客するため、機会損失を補えるのも魅力だ

トラコレでは掲載店舗に、絶対に勧誘をしないという制約を課している。
お客が必ず書くアンケートに勧誘を思わせる言葉があると、二回目の報告で掲載を取り消す徹底力が信頼を生んでいる。

トラコレに対し、現在売り上げの大半を占めるのがジリリだ。
こちらは約800件に及ぶ提携店舗のカードを収納できるアプリとなっている。

飲食店、アパレル、エステ……様々な店舗で渡されるショップカード。
店側としては、接触のあったお客のリピート率を上げるべく作る場合が多い。しかし、実物のカードはかさばる上、忘れたり無くしたりしてしまう。

そこでジリリでは、提携店舗のカードを全て一つのアプリに収納できるようにした。
スマートフォンに入れてしまえば、何十枚あろうが無くす心配はなく、提携店舗の近くを通るとお得な情報を流すこともできる。

カードやクーポンは、フェイスブック、ツイッター、LINEといったSNSを通して友人に送ることが可能だ。
まだ一度も来店していない人でも、潜在的な未来の顧客にできるのが特長となっている。
トラコレでお試しに来てもらったお客のスマホにカード情報を入れ、そこからさらに拡散を図るのが狙いだ。
まさにエステなど、人々が「将来やりたいが、まだできていない」ことを減らす事業と言える。

社内コミュニケーションを活性化

CIMOS

このトラコレ、ジリリと一線を画し、社内コミュニケーションの促進ツールとして開発してきたのが、 シンクスマイル・モチベーション・システム、略してシーモスである。
2年前より外部への販売を目標として自社で使用し、精度を高めてきた。

経営者は誰でも、社員に楽しく働いてほしいものだ。しかし「仕事」と検索すると、 「辞めたい」「ミス」「ストレス」とネガティブな言葉ばかりが予測検索として並ぶ。

新子は、この現状を打破するためには「褒める」という行為を可視化することが有効な手段だと考えた。

シンクスマイルにも行動指針があるが、重要なのは実践できるかどうか。
いかに楽しく実践するかを考えた結果として生まれたのが、大切にしている価値をバッジに変え、 社内サイト上で互いに贈り合うシーモスのシステムだった。

毎朝、「お客様に驚きと感動を!」と全社で叫んでも、新人は具体的にどうすればいいのか分からない。 お客に良い提案をするなどして感動が生まれた際、皆からバッジが贈られれば、どうすれば顧客感動が生まれるのか実感できる。

重要なのは、評価が上から一方的に与えられるものではないということだ。 自分以外の全社員からの完全な360度評価なので、自分の長所と課題を明確に把握できる。
バッジを贈る際に必ずコメント欄に書き込みをするため、自然と社内のコミュニケーションも活発になる。
アイデア力や情熱といった数値化できない評価がバッジの数から把握できる点も長所だ。

シーモスの導入には、初期費用として最低数百万円が必要となる。 そして、アカウント一人あたり500円が月額でかかる仕組みだ。ただ、これでは予算的に導入が難しく、 「楽しく働ける会社を増やす」という当初の目標を達成できない。
そのため現在、最初は無料で使えるモデルを開発しており、2014年3月にリリース予定だ。 最終的には、社内コミュニケーションのプラットフォームを目指す。

シーモスで適材適所を実現

通常の導入企業ではシーモスの中身が外部に出ることは無い。しかしシンクスマイルでは、 シーモスによる評価をかなりの部分で公開している。それは、同社がシーモスを人事制度に結びつけていることが大きい。

バッジは半年に一回の集計。月間でマネージャークラスは40個、一般社員は20 個贈ることができる。

現在は、獲得バッジが1000個を越えている強者もいる。バッジを10個獲得するとメダルに変わる。

メダル1個につき、固定給が1000円上がるため、10種類全て取ると1万円の昇給となる計算だ。

また、部署の異動にもバッジは必要となる。企画部に行きたくてもアイデアバッジがゼロでは説得力が無い。

ベンチャー企業にとって適材適所が出来るか否かは死活問題。「紙切れの辞令は形式的なものであり、本当の辞令は周りからもらうもの」 と説く新子は、適性と能力を備えた社員がそれに応じた仕事を楽しみながら思い切りできる環境を作ることこそ経営者の仕事だと考えている。

日本中の「褒める」を見える化

CIMOS

起業のきっかけは、17歳でアメリカを一周した時の体験が大きい。

偶然立ち寄ったマサチューセッツ工科大学(MIT)のオープンキャンパスで講演していた企業家が、 「経営者とは幸せの専門家」と話すのを聞き、心を惹かれた。

帰国し、19歳で起業。20代は生き残るのに必死だった。「布団と消火器以外は売りましたね」と笑う新子。

それでも、経営者人生20年以上を経て、未だモノが売れなかった経験は無い。

ただ、何でも売れるからこそ何を売るかが重要だと考え、「楽しく仕事をする」という概念を形にして売り出したのがシーモスである。

シンクスマイルの売り上げは2013年4月期で8億8000万円を突破し、絶好調だ。

「僕らのようなベンチャー企業は、人・モノ・金のうち人しか無い。会社を成長させるためには、人を成長させるしかありません」

と語る新子は、「褒められた方が人は伸びる」がモットー。褒められて感謝された社員は、

もっとチームのために貢献できないか自発的に考えるようになる。その「褒め合い」の相乗効果が会社全体の業績を引き上げているという。

「認める、褒める、感謝するといった精神的な報酬は無尽蔵だ」と新子は説く。通常は口頭で褒められてもその場限りだが、 シーモスを導入すると褒められたことが形になって残り、その社員の力に変わっていくため、成長も実感しやすい。

シーモスは理念として汎用性があるので、今後は医療機関、学校、役所などへの導入も考えている。様々な職場で「褒める」が見える化されれば、心のこもったサービスが増えることも必至だ。

「良いサービスを生むには良いチームが必要。チーム作りのツールとして導入してほしい」と新子も勧める。

日本中の人々がバッジを贈り合い、互いの健闘を称え合えば、確実に世の中は明るくなっていくだろう。

代表プロフィール

新子 明希

株式会社シンクスマイル代表取締役

高校時代にアメリカ大陸を一周。
この時に「経営者は幸せの専門家である」という考え方を知り、経営者になることを決意。
1990年に高等学校を卒業後、教材の販売会社に入社。
1993年に代理店として独立。2007年にシンクスマイルの前身であるIコンサルティングを設立。
2011年にシンクスマイルに商号変更。